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ホンの基礎知識 | |||
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マルチアンプの基礎知識 |
市販システムとどうちがう? ネットワーク装置の問題点 チャンネルデバイダーの役割 マルチの弱点は? チャレンジの概要を教えてください くどいですが心の準備を |
このページはラブラドールレトリバー犬soopooが書きました。
ほんとですってば。
このページは「マルチアンプシステムは初めて」というオーディオファンのためのものです。「知っているよ」という方は読み飛ばしてください。
マルチアンプシステム構築の目的は、(1) 一般的なスピーカーシステムからLCネットワーク装置を取り払って高品質な音の再生を目指すこと、(2) アンプやスピーカーユニット、エンクロージャを自由に組み合わせてオリジナルのシステム作りを楽しむこと、などになります。
オーディオファンの多くがいつも考えることは、「自分のシステムを少しでも満足できるように、少しでもいい音で聞けるように」ということですが、要するにそれを実現するための一つの選択肢がマルチアンプシステムです。
市販システムとどうちがう? | ホンの基礎知識 - マルチアンプの基礎知識 | |
一般的な市販オーディオシステムとマルチアンプシステムとを比較すると下の図のようになります。
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一般的なオーディオシステムにおいてスピーカーエンクロージャ内に設置される電子回路「ネットワーク装置」は、マルチアンプシステムにおける「周波数帯分割装置」と同じ機能を実現するものですが、後者は独立した電子機器としてパワーアンプの前に置かれます。つまり、周波数帯分割装置がパワーアンプの前にあるのか、その後にあるのかということと、パワーアンプとスピーカーユニットが直結されるかどうかということが両者でまったく異なります。
ネットワーク装置の問題点 | ホンの基礎知識 - マルチアンプの基礎知識 | |
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ネットワーク装置を経由してスピーカーを鳴らす方法には以下のような問題があります。これらはマルチアンプシステムの優位性を説明する時の根拠になるものです。
- コイルやコンデンサーの影響で周波数特性やダンピング性能、音の立ち上がりや立ち下がりに悪影響が出る。
- 分割周波数の微調整や変更を手軽に行えず、急峻な分割特性を持たせることも難しい。
- フラットな周波数特性を実現するのが難しい。意図した特徴を持たせることも難しい。
- 超低域周波数での帯域分割が難しい。
- 複雑な位相回転(位相のずれ)への対応が難しい。
- タイムアラインメントの調整ができない。ホーンシステムには影響が大きい。
- 高性能のコイルやコンデンサーは高価。
- メンテナンスが難しく、システムの劣化を見過ごしやすい。
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プリアンプやパワーアンプからケーブルにいたるまで最善の分別と最高の出費をしてせっかく理想の音を期待しても、それらをすべて無意味にしてしまうのがコイルやコンデンサーだということだ。筋は通っている。
大音量再生ほど悪影響が目立つ。コンサートホールや大規模スタジアムのPAシステムは多くがマルチアンプシステムにしているはずだ。
ネットワーク装置を分解してコイルを取り出してみたことがあるが、銅線の太さは不十分だし、何より問題なのはコイル銅線の長さだ。500Hzカット用コイルをほどくと20m以上もあった。仰天した。これではアンプやスピーカーケーブルをいくら高価なものにしてもコイルでピュアオーディオが無意味になってしまう。「ケーブルをモンスターにしたら音がよくなった」と公言する連中の耳を信じられなくなった。
soopooはコンデンサーを知ってるか? こいつは充電と放電を繰り返す電子部品で、当然そこで導線の直結は終了する。せっかくDCアンプを使ってもそこで夢は打ち砕かれる。事情を知らない人が多いがね。
細かい話になるが、市販スピーカーシステムではネットワーク装置の大部分が6dB/octから18db/octの遮断特性で帯域分割を行うが、ツィーター用フィルタがたとえば10kHzから6dB/octで低域をカットしている場合、5kHzの音が-6dB(音量50%)でツィーターから出るし、2500Hzも-12dB(音量25%)でそこから再生されてしまう。ツイーターとスコーカーの音が広帯域で混じり合うことになる。音の雑味になるだろう。18dB/octなら音の重なりの回避という点ではベターだが、コイルやコンデンサーを多段に使わなければならないから、そこが別の弱点になる。1段でも悪影響があるのだからね。そのうえ抵抗器で音量調整などしている。ただ、そのようにして出てくる音に感動する人もいるからオーディオは魔訶不思議な世界だ。
また、コイルもコンデンサーもそれをオーディオ信号が通過するたびに位相の回転が起きる。周波数遮断特性や減衰特性によって回転の仕方も様々だ。すると、帯域間で大きな差がある場合は音への影響を心配することになる。ツィーターとスコーカー間の位相特性の差はあまり気にする必要はないようだが、スコーカーとウーファーまたはウーファーとスーパーウーファーの位相特性については目立った問題になることがあって、たとえば中低域がひどく痩せて聞こえたり、場合によっては超低音がほとんど聞こえなくなる事態が起きる。これはLCネットワーク装置では対応が難しい。
スピーカーシステムの周波数特性を測定してみれば分かるが、高名製品も無名品も例外なくフラットとは程遠い結果になる。「ぐちゃぐちゃ」にならないものはない。原因の一部は位相回転のせいだ。ユニットへの接続でプラスとマイナスを逆にしただけではどうにもならない。もっとも、そんな音を聞いて「さすがはJBLだ」などと言っているんだよね。やれやれ、どうしたらいい?
Gは必ず口を減らしてください。
しかし、あと一つ強調したいことがあるんだよね。それは遅延(タイムアラインメント)の問題だ。
ホーン型スコーカーの中には音道が1mを超えるものがあるが、それをウーファーエンクロージャの上に置いたのではスコーカーの振動版がウーファーのそれよりずっと後方に離れることになってしまう。当然、スコーカーからリスナーに届く音は遅れてしまう。周波数分割ポイント付近の音はスコーカーからもウーファーからも出るから遅延が大きければ問題だ。音道30cmほどの小型スコーカーでも問題になる場合がある。
遅延問題は一部のマニアには早くから認識されていたが、ネットワーク装置では対応できないから話題になることは少なかった。アンプやケーブルに数百万円を使うマニアもこの問題には目をつぶってきた。投資を無意味にする問題だというのにだ。
もっとも、小さなオーディオルームでの遅延は極端になることはないから、それを音の雑味に感じる人がいる一方で音の豊かさとして感じる人もいるようだ。弦楽合奏などパルシブな音のない楽曲ではかえって豊かな演奏に感じられるかもしれない。それに耳が慣れれば当人にとっては遅延問題など何もないのと同じだね。
しかし、交響曲では打楽器が活躍するし、POPsはパルシブな音だらけだ。遅延を無視すると、たとえばシンバルの音が金属の音ではなく陶器のもののようになってしまうかもしれない。それでいいのか諸君? いいなら仕方がないが、デジタル処理なら遅延問題は素人にも解決できるってのを知らないのか諸君?
Gの放言を誤解しないでくださいね。小庵は「非マルチにはいいところが何もない」と主張していません。実際、ネットワーク方式は世界の大多数のオーディオ製品で採用されており、高い評価を得ている製品も少なくありません。
「ネットワーク方式のどこが不満なのか」と反撃してくる勇士に対しては、何を言っても屁理屈のようなものだ。
それでも、「さらに上を」と目指すオーディオファンにとって、問題点に目をそむけたままでは山の頂上を極めた気にならないことも確かだね。趣味人なら満足できないだろう。「ぐずぐずして時間切れになるくらいなら、とにかく行ってみよう」という姿勢の方が気分は爽快だ。少なくとも山の様子がどうだったかを語ることはできる。語ることがなくなったら趣味はオシマイだよ。
富士山に登るという目標はどうなりましたか?
それこそ我輩の2020年の目標だ。元日から288mの山に登ったし、なんとかなるかもしれん。
チャンネルデバイダーの役割 | ホンの基礎知識 - マルチアンプの基礎知識 | |
マルチアンプシステムを構築するために必須となるチャンネルデバイダーは以下のように動作する音響機器です。
- CDプレーヤーなどの音源再生装置やプリアンプなどの入出力装置からオーディオ信号を受け取ります。
- デジタルシステムの場合、入力がアナログ信号である場合はそれをデジタル信号に変換します(ADCの機能)。
- 入力信号を出力回路に分配します。3-way用チャンネルデバイダーの場合、低域信号や中域信号、高域信号を出力するための回路に入力信号をそのまま渡します。その後、それぞれの回路で低域カット処理や高域カット処理など適切な処理を行います(フィルタ処理)。
- チャンネルデバイダーによっては以下の追加処理を行うことができます。
- タイムアラインメントの調整(遅延処理)
- 位相の調整
- 周波数特性の調整(イコライジング)
- 音量の調整
- デジタルシステムの場合、出力に備えてデジタル信号をアナログ信号に変換します(DACの機能)。
- 最後にそれぞれのオーディオ信号を出力して次の機器(パワーアンプ等)に渡します。
アナログタイプのチャンネルデバイダーの場合、デジタル入力に対応しないものが大部分です。また、タイムアラインメントや位相、周波数特性などの調整についても簡易な機能しかありません。
マルチの弱点は? | ホンの基礎知識 - マルチアンプの基礎知識 | |
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マルチアンプシステムは誰にでもすすめられるものではありません。また、「始めれば必ず成功する」というようなものでもありません。成功はあなた次第です。実際、アナログオーディオ時代のことですが、Gのかつての友人たちの多くはそれに失敗したということです。あとで後悔したくないですよね。そこで以下の点について改めてよく考えておきましょう。
- チャレンジには多かれ少なかれ必ず試行錯誤があります。
- マルチアンプシステムは、比較的に広い部屋(6畳以上を推奨)でなければその真価を発揮できません。
スピーカーシステムからリスニングポイントまで少なくとも2mを取れる環境がおすすめです。 - マルチアンプシステムは、比較的に大きな音量で鑑賞しなければその真価を発揮できません。
小音量にしなければならない環境にはマルチアンプシステムはすすめられません。
小音量なら小型2-wayや16cmフルレンジの方がずっとまとまった音がするね。
低音不足になりやすいがサブウーファーを使えば大きな効果がある。 - アンプやスピーカーユニット、エンクロージャ等の選択で悩まされることがあります。
- デジタル製品を使う場合、適切な運用法についての知識が必要です。
- タイムアラインメント(遅延の調整)や位相についての知識が必要になります。これらに無関心でいると、たとえ世界最高のアンプやスピーカーを使ったとしてもマルチで成功することは不可能です。
- あなたの製品選択によっては大きな出費が必要になる場合があります。
- 電気代がいくぶん高くなるでしょう。
「マルチにしたら音が痩せたような感じがする」という感想を聞くことがあります。「中低域がちょっと不足気味になった」とも。これもマルチの弱点でしょうか。
しかし、これはネットワーク越しのぼんやりした低音に長く慣れていたためだと後になって気がついた。それを音の豊かさと思い込んでいたわけだ。アンプとウーファーユニットが直結されたことでダンピングのよい引き締まった低音が出るようになったのに、それに耳が慣れていなかったのだと思う。聞いたことのない低音が出てきたので不安になったのだろう。もちろん今では満足している。
技術上の課題については小庵の記事を参考に解決してください。小庵の記事を参考にしてマルチアンプシステムにチャレンジするなら、基礎的な成功を収めるのは難しくないとぼくは確信しています。
チャレンジの概要を教えてください | ホンの基礎知識 - マルチアンプの基礎知識 | |
小庵は後続するセクションで実際にマルチアンプシステムを構築しますが、作業の主要点をまとめれば以下のようになります。個々の項目については [何が必要ですか?] セクションで詳しく説明しています。
スタートは3-way
マルチアンプシステムは2-wayから始めて、3-way、4-wayと分割数を増やすシステム作りを楽しめます。マニアの中には5-way以上の分割を行っている人もいますが、小庵は3-wayシステムを最初のチャレンジにします。セットアップが比較的に容易で成果を挙げやすいからです。3-wayの経験があれば、4-way以上へのチャレンジも難しくありません。
分割数が増えるほどに金はかかる。それなのに成果が乏しい場合があるから冷静さが必要だ。
チャンネルデバイダーの準備
マルチアンプシステムにはチャンネルデバイダーが必須です。チャンネルデバイダーは近年ではスピーカーマネジメントシステムやスピーカープロセッサーなどと呼ばれる機器の機能の一部になっていることがあります。小庵はデジタル製品によるチャレンジを行います。デジタル製品は安価ですが、うまくセットアップすれば高性能を実現できます。
マスターボリュームの準備
3-wayマルチアンプシステムではステレオ6チャンネル分の音量を同時にコントロールします。そのための音量調整装置をマスターボリュームと小庵は呼んでいます。これはAVアンプなどには内蔵されていますが、それを使わない場合はあなたが自作するか購入する必要があります。マスターボリュームはマルチアンプシステムの難関の一つです。
パワーアンプの準備
3-wayシステムでは6個のスピーカーユニットそれぞれを専用のパワーアンプで鳴らす必要があります。ステレオアンプなら3台が必要です。パワーアンプはプリメインアンプで代用することができます。また、7.1chのAVアンプの一部は6チャンネルの一体型パワーアンプとして使うことができます。小庵はAVアンプの活用をすすめています。
信じられないかもしれないが、まあ試してみれば分かる話だ。
スピーカーシステムの準備
マルチアンプシステムの最も重要な構成要素がスピーカーシステムです。3-wayシステムの場合、ウーファーとスコーカー、トゥイーターのそれぞれのユニットが2本ずつ必要になり、それぞれを収容するエンクロージャも必要になります。ウーファーユニット以外はエンクロージャに入れなくてもよい場合があります。
スピーカーユニットは市場に流通しているものを購入しますが、入手ルートはそれだけではありませんね。エンクロージャは自作するか業者に外注することになりますが、大型のものの自作は容易ではありません。ただし、わが国のオーディオ黄金時代に発売された一体型スピーカーシステムを利用(改造)することにすれば、ユニットやエンクロージャについての困難を避けることができます。
くどいですが心の準備を | ホンの基礎知識 - マルチアンプの基礎知識 | |
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マルチアンプシステムを構築すると、少なくとも「LCネットワークのない音を実現したぞ」という満足が手に入ります。システムをうまくセットアップできれば「おお、これがマルチの音か!! 前のものとぜんぜん違うね」と、さらに大きな満足が手に入るかもしれません。
しかし、そのためにあなたが支払うコストも考えておきましょう。
- あなたがお小遣いを減らすことは確実です。
- あなたは多くの時間を失うかもしれません。
- とどのつまり、あなたは失敗するかもしれません。
それでもチャレンジしてみますか?
ツァラトストラが言っているぞ。「深淵に見入る者は 深淵に魅入られる」
先にこれくらいは書いておかないと、あとで追い掛け回されるかもしれないですよね。
お前は逃げ足が速い。
ぼくは本当は楽観しています。マルチアンプシステムは初めてという読者のみなさんは、小庵の記事を参考にして機器の選択やセットアップを行ってみてください。そうすれば思いのほか短時間で結果が出るでしょう。きっと試聴テストでも満足を得られるはずです。
予算額については [構成例・予算例] セクションに参考情報があります。小庵の目標は「ポケットマネーでマルチを」ということなので、その約束を守りたいと思っています。
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