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ネットワークオーディオ | |||
1. ネットワークオーディオって? 2. LANの基礎知識 3. ハードウェアとソフトウェア 4. 構成例#1・PCなしでもOK 5. 構成例#2・PCを活用しよう | |||
<他のセクション> | |||
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- ネットワークオーディオ - |
ハードウェアとソフトウェア |
インターネットを利用しますか? 必要なハードウェア 「オーディオ用」ネットワーク機器について 必要なソフトウェア |
本ページでは、ネットワークオーディオシステムを構築するために必要になるハードウェアとソフトウェアについて書いています。
あなたのネットワーク環境やオーディオ環境にあわせてそれらを準備することが大切です。無駄な買い物をしないようにしましょう。安価にシステムを構築したからといって音が悪いということは決してありません。一方、投資額を増やせば音がよくなるということも少ないのです。不思議ですか?
インターネットを利用しますか? | ネットワークオーディオ - ハードウェアとソフトウェア | |
今や常識かもしれませんが、インターネットのストリーミングサービスや音源ダウンロードサービスを利用するのであれば、そのための回線を敷設してプロバイダとインターネット利用契約をする必要があります。既存の接続回線のうちADSLタイプのものは2023年または2024年までにサービスが終了するので光回線等に更新しましょう。
集合住宅の場合、壁にLAN用コンセントが設置されてそのままインターネットを使える場合があります。近年は光ファイバー網が整備されたので通信品質への心配がなくなりましたが、LAN内に多くのネットワークオーディオユーザがいる場合は、広帯域回線を契約しなければならない場合があるでしょう。ハイレゾ音源のストリーミングサービスを利用する場合はちょっと注意してください。
回線の契約ではスループット値に注目しましょう。ただし、多くの契約では「回線が理想的な状態での値」で、うたい文句どおりの性能が出ることはほとんどありません。どうしても高品質回線が必要な場合は帯域保証のある回線契約をすることになります。高額です。
必要なハードウェア | ネットワークオーディオ - ハードウェアとソフトウェア | |
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ネットワークオーディオ環境は一般に右図のように構成されますが、あなたの環境で実際に必要になる機器についてはあなたのLANの実情とオーディオ計画に合わせて判断する必要があります。下記の機器がすべて必要ということではありません。
以下の機器で電源を必要とするものを購入するときはACアダプタつきのものではなく電源装置を内蔵するタイプを小庵はすすめます。
オーディオシステム | |||
ネットワークオーディオを楽しむからといって特別なオーディオシステムを用意する必要はまったくありません。もちろんマルチアンプシステムである必要もありません。既存のオーディオシステムに以下の専用機器のいくつかを追加するだけです。
ルータ | |||
ルータは本来は経路制御(ネットワーク間ルーティング制御、LANからLANへの交通整理)を行うための電子機器ですが、プロバイダへの接続機能やIPアドレス自動割り当て機能、ワイヤレス(無線)接続機能等を併せ持つものが大部分です。IP電話機能を持つものもありますね。インターネット接続回線や上位ネットワークに合わせた製品を選択する必要があります。
2020年の市販ルータの大部分は100Mbpsまたは1000Mbps(1Gbps)のスループットをうたっているはずです。LANが小規模(ユーザ数が数人程度)である場合にはそれで十分な性能です。近年は驚くほど高性能の製品も販売されていますが、ハブやケーブルなどの関連機器もそれに対応している必要があり、メンテナンスには特別な注意が必要で、返ってトラブルが多くなってしまうこともあるので、「高性能だからおすすめ」というわけにはいかないと小庵は考えています。1000Mbpsで安定動作が期待できるもの、つまり2020年の普及品を使いこなしましょう。
なお、上位ネットワーク(プロバイダ等)がケーブルテレビ網である場合はルータが不要になる場合があります。また、ルータの代わりに専用モデムを使う場合もあります。
ワイヤレス接続機器(WiFiルータ/無線LANアクセスポイント) | |||
あなたのLANはケーブル接続でもワイヤレス接続でも構築することができます。スマートフォンやタブレットPCからLANを利用する場合はワイヤレス接続になります。LAN内ユーザが数人程度なら、近年のワイヤレス機器はどれを購入してもネットワークオーディオを楽しむのに十分な性能を持っています。ただし、Bluetoothの利用ではハイレゾ再生は難しいでしょう。
ワイヤレスによるネットワーク利用を可能にするには無線接続を可能にするための機器を準備してセットアップする必要があります。近年のルータの多くはその機能を持っています。ルータにその機能がない場合は無線用アクセスポイントと呼ばれる装置を用意します。セットアップについては機器の説明書に従ってください。標準セットアップで特に問題はないはずですが、接続用パスワード(パスフレーズ)については十分に複雑なものにしてください。さもないと、あなたのLANが第三者に不正に利用されるおそれがあります。
ハブ (スイッチ、リピータ) | |||
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ハブはネットワーク通信を中継または分配する装置です。スイッチやリピータと呼ばれることもあります。(1)単に中継のみ行うもの、(2)通過データの補正を行うもの、(3)ネットワーク内デバイス間の経路を直結してそれ以外の経路にデータを流さないようにするものなど、いくつかの選択肢がありますが、2020年の新品なら低価格のものでも(3)のタイプのはずです。このような動作をするハブは一般にスイッチングハブと呼ばれます。
100BASE-Tや1000BASE-Tという規格の名称は、イーサネット用のこのデバイスが100Mbpsまたは1000Mbps(1Gbps)の伝送性能(スループット)を持ち、ベースバンド方式のデジタル伝送を行い、線材を縒り線(ツイストケーブル)にしていることを意味します。
ハブはスループット性能が重要です。24bit/96kHzのハイレゾ音源はおよそ4.6Mbpsのスループットを必要とするので、LANを数人程度で使用するのなら100Mbpsの性能があれば問題がありません。これに対応するハブは "100BASE-T" や "100BASE-TX" という規格のものを選択するのが一般的です。安価に購入できるはずです。人数が多い場合や24bit/96kHz以上のハイレゾ音源もということであれば1000Mbps以上に対応するハブを検討しなければならない場合があります。
ネットワークケーブル(LANケーブル、イーサネットケーブル) | |||
ケーブル接続でネットワークを利用する場合に必要です。2020年に電気店で購入できるのは「カテゴリー5」または「カテゴリー5e」、「カテゴリー6(6A)」と分類されているもののどれかのはずです。書いた順に性能が上がり、価格も上がりますが、運用上の注意点が多くなります。「カテゴリー7」や「カテゴリー8」のものもあるのですが、取扱いが難しく一般的ではありません。
LAN内ユーザが数人程度までであれば「カテゴリー5」または「カテゴリー5e」のケーブルが十分な性能を持っています。運用上の注意事項を守れるなら、また他の関連機器(NASやハブ、ルータなど)が十分な性能を持っているなら「カテゴリー6」を活用できるでしょうが、自信がない場合はかえってトラブルを増やしてしまうかもしれません。
高性能ケーブルを使う場合、以下の注意事項に配慮してください。「配慮」というのは「もし可能ならそうしてください」という意味で、そうしなかった場合に必ず問題が起きるという意味ではありません。
- ケーブルの自作はおすすめできません。
- ケーブルを強く曲げてはいけません。
- 強く引くなど、無理な力をかけてはいけません。
- 電気配線とは15cm以上離してください。それをまたぐ場合は直角に交差するよう配線を工夫してください(そんなこと無理?)。
- 蛍光灯など、インバーター機器を近づけないでください。
NAS (Network Attached Storage) | |||
ネットワークに直結され他のPC等のデバイスからアクセス可能な記憶装置です。ネットワークオーディオ専用装置ではなく、ドキュメントファイルや画像ファイル、音源ファイル等、ファイルの種類にかかわらずそこに置いてLAN内のユーザで共有するための装置です。
内蔵ディスクメディアが1個のものや複数個のもの、複数のネットワークに接続可能なもの、光ファイバー接続が可能なもの、システムやデータのバックアップ機能を持つものなど、多様な製品があります。内蔵ディスクメディアはハードディスク(HD)またはSSDです。SSDの方が高速ですが割高でしょう。
そもそもNASが高速かどうかということとネットワークオーディオでの音のよさとは関係がない。
いずれにしてもネットワークのスループットを気にしなければならないというのがネットワークオーディオの弱点の一つだ。
「SSDの方がHDより音がいい」と平気で言うオーディオ界の先生がいるね。困ったものだ。「SSDは回転機構を持たないから振動がなく高速処理も可能」という事実をアナログオーディオ時代の先入観念から「だから音がいいはずだ」と思い込んでいる。思い込むと実際にそう聞こえるらしいから人間は不思議だ。始末が悪いとも言えるが。
今のところデジタル技術についてはオーディオ関係者には質問しないのが安全だ。HDもSSDもただの磁気ディスクでデジタルデータを格納するだけだ。正常なディスクならどちらをオーディオ用に使っても同じ結果が得られる。
改めて考えてみよう。そもそも「SSDの方がHDより音がいい」と主張するためには、それぞれのディスクにオーディオデータを保存するとき、またはそこからそれを読み出すとき、「2つのデータに差が生まれる」ということを証明しなければならないが、それに成功するオーディオ関係者がいるはずはないし現れるはずもない。しかし、来年の雑誌にはまた同じことが書かれるだろうね。
PCサーバ/ファイルサーバ | |||
あなたがPCに親しんでいるならNASの代わりにそれを使って音源ファイルやPCドキュメント、画像ファイル等の共有を行うことができます。ワークステーションやサーバ専用機ならNASを上回る高度なセキュリティ管理やタスク管理(バックアップなど)も可能です。
ネットワークプレーヤー | |||
LANに直結してNASやファイルサーバにアクセスし、音源データをオーディオシステムに出力できる機器です。DACを内蔵してアナログ出力を可能にしているもの、デジタル出力を可能にしているもの、USB接続の外部DACに対応するもの、パワーアンプまで内蔵するもの(ネットワークレシーバー)など、多様な製品があります。
あなたのオーディオシステムがS/PDIF(光ケーブル/同軸ケーブル)によるデジタル入力に対応しているなら、ネットワークプレーヤーはDACやパワーアンプ機能を内蔵する必要がないので、比較的に安価に購入できるはずです。
楽曲再生などネットワークプレーヤーの操作はプレーヤーの操作画面から、あるいはスマートフォンやタブレットPCにインストールした専用アプリからワイヤレス接続で実行します。PCにインストールできるアプリもありますが、PCオーディオでのfoobar2000のような機能性は持たないのが普通です。
音楽プレーヤーをインストールしたPC | |||
これについては [PCオーディオ] セクションの「PCオーディオ活用法」ページで説明しています。ネットワークプレーヤーを使わない選択肢があるということです。PC操作に慣れた人におすすめです。
スマートフォン、タブレット | |||
ネットワークプレーヤーを操作するために必要です。また、PCにリモートデスクトップ接続を行い、そのPCオーディオ環境を利用することもできます。LANへ接続するためのセットアップとプレーヤー専用アプリのインストールが必要な場合があります。
「オーディオ用」ネットワーク機器について | ネットワークオーディオ - ハードウェアとソフトウェア | |
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前掲した関連ハードウェアの一部については「オーディオ用」と銘打った製品が一部で販売されています。驚くほど高価です。製品案内には以下のような主張があります。専門知識がなければ判断に迷いますね。
- 外来ノイズの影響を受けにくいケーブル構造にしたので音がよくなる。
- ハブやルータなどで遅延対策をしたので音がよくなる。
- データ伝送時のプロトコルをオーディオに適したものにしたので音がよくなる。
メーカーにしてみれば「オーディオ用」と書くだけでマニアが飛びついて大金を払ってくれるのだから、ありがたい話だ。書いただけだと「詐欺だ」と指摘する者が現れるから、多少は製品作りで工夫をして提灯記事を書いてもらえるようにしている。金儲けのことなら商売人に相談すればよい。
ネットワークビギナーが迷わないように率直に書いておけば、「それらを真に受けて大金をつぎ込んでも、あるいはそれらを無視して普及品だけにしても、あなたのオーディオシステムから出てくる音はほとんど変わらないだろう」というのが2020年の小庵のアドバイスになる。
「オーディオ用」という言葉はあなたの気分を満足させてくれるかもしれないが、あなたの耳を実際に喜ばせてくれることはないだろう。そもそも「非オーディオ用」という製品はないはずだ。それがその手の話を評価する場合の重要なヒントだ。
「いやそれでも変わる」派や「自分で買って試してみれば分かる」派がいることは知っているし、事例や理論を持ち出して強硬な主張をする人々もいるだろう。しかし、信頼できる技術者から話を聞けばそれは理解できることだと思う。そもそも2020年のネットワークオーディオにはまだ問題点が多く、最高のオーディオ体験をそこで求めるには無理がある。どうなるか分からない要因が多いからだ。「便利だね」程度にしておくのが賢い判断だ。時間とコストをかければ「そこそこに聴ける」というレベルにはできるが、「よい音で」ということならPCオーディオまでの話だ。
そんなわけで「オーディオ用」製品について小庵が特に評価するものは今のところないのだが、これは販売中の製品を否定しているわけではないことは理解してほしい。未熟な分野を改善しようとする種々の試行錯誤の一つだと考えている。中には怪しげなものもあるが小庵はそれも否定しない。それらも尊重されるべきだ。趣味のことで誰が何に金を使ったからといって批判できることではない。
改めてデジタル技術の常識について | |||
これまで本サイトで何度か書いていますが、LANケーブルやUSBケーブルなどデジタルデバイスの交換で「音がよくなった」や「音が悪くなった」ということが客観的に起きたとするなら、それはそれらによるデータ通信において「送り出したデータの一部または全部が伝送中に変わった」ということを意味します。「ファイルの内容が変わった」と言うこともできます。でも、本当にそんなことが起きるのでしょうか。
外国の支社に給与データを送るのに1ビットの変化があっても大変なことだ。そのときデジタルデータは太平洋を渡って数千キロメートルを旅することもあるが、それでも問題が起きないように伝送技術は作ってある。ノイズが混入し、遅延が起き、伝送エラーが起きることは初めから分かっているので、それらへの適切な対応を含む技術になっているということだ。その技術はそのままあなたのLANでも使われている。
エラーが起きやすいデバイスやそれを自動訂正できないデバイスはそもそも製品化されないし、標準規格も検討されない。使い物にならないからだ。これは常識の範囲のことだと思う。LANケーブルやUSBケーブルが世界に広く受け入れられたという事実は、それにどれほどの信頼性があるかを具体的に示している。それを理解し尊重するなら、ここで議論しようとしていることについてはすでに結論が出たも同然だ。
ノイズが混入すれば音が悪くなる? | |||
オーディオファンの多くは「ノイズ」という言葉に敏感です。アナログオーディオを長く経験した人ほど「ノイズが少ない製品がよい製品だ」と考えているようです。ほとんど反射的に反応します。この判断は本当に正しいのでしょうか。
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光ケーブルなら理解できるような気がしますけど。
ノイズが乗らないLANなんて考えられないね。
しかし、不思議に思わないかな? LANケーブルのノイズ対策はアナログオーディオの技術から見れば信じがたいほど安易だ。カテゴリー6の高速ケーブルでも信号線がシールドされていないものがあるし、100BASE-Tや1000BASE-Tのケーブルは100mまで伸ばしてもデータ通信に問題は起きない。ノイズが盛大に乗っているはずだが、それでも問題がない。
メンテナンスが不十分な家庭内LANも普通に使えますし、今では世界中で受け入れられています。
だから、「アナログとデジタルとではノイズの影響を同列に考えることはできない」というところまでは理解してほしいところだ。つまり、LANケーブルにノイズが乗るから音が悪くなるというのは短絡した思考で、多くの場合は間違った判断だと思う。
大型・大電力の工作機械などが多数稼動するような特別な環境でない限り、たとえば家庭内LANではノイズの影響は現れない。ノイズがあったとしても、それが実際に音声信号として再生される可能性はほとんどない。デジタルデバイスは通信データが "0" なのか "1" かを正しく判断できなければならないが、そのために信号電位の閾値を決めて、それ以上の電位を持つ信号が到着すればそれを "1" とし、そうでないものはすべて "0" にしてしまう。ケーブルに乗るノイズは閾値よりかなり低いので "0" となり、結果としてデジタル伝送に影響が出ることはない。つまり楽曲データの "0" は "0" のまま、"1" は "1" のまま伝送先に届く。NAS上の楽曲ファイルは何の変更もなくネットワークプレーヤーに届く。これは「音は変わらない」ということを意味する。
もちろん、あなたの耳はあなたの感情や主観に基づいて音が変わったかどうかという判断を下すだろう。それには小庵は関心がない。
よく分からないと押し切られてしまいますよね。
こういう場合の店員やオーディオマニアへの対応は簡単だ。まず「それで?」と先を促す。すると彼は知っている限りのことを話すだろう。こちらは「それで?」だけ何度か繰り返す。技術詳細について反論も同意もしてはいけない。そのうちに彼は興奮が収まるだろう。頃合を見て「その話を要するに、そのケーブルを使うと音がよくなるように楽曲ファイルの内容が変わってしまうのか?」と質問すればよい。真摯な学習をした人であれば彼は黙ってしまうだろう。黙った彼に追い討ちをかけるのは悪趣味だから話題を変えよう。
なお、ノイズが多い場合に通信エラーが起きる場合があることは事実だ。しかし、それでもオーディオ再生には影響が出ないことがほとんどだ。というのも、現代のネットワーク技術は通信中にエラーが発生したかどうかやデータが目的地まで正しく届いたかどうかを検知できるようにプロトコルが作ってあるから、もしそんな事態になった場合はデータの再送を行うからだ。何度も再送が発生することもあって「ネットワークが遅い」と感じられる事態も起きるが、その場合でもネットワークデバイスのバッファ処理のおかげで楽曲が間延びして再生されるようなことはない。あまりにひどいエラーや遅延の場合は通信が停止するが、これは「音が悪くなる」ということとは異なる。
音が悪いケーブル構造はある? | |||
オーディオマニアの多くがアナログ用途の信号ケーブルやスピーカーケーブル、電源ケーブルなどに強い興味を持っていることをあなたは知っているでしょう。マニアの部屋にはそれらが山になっています。「これでもない」や「それでもない」と繰り返した結果ですね。もちろん、売っている人がいるから買う人がいるのです。それなのでLANケーブルも同じ調子なんです。
デジタル時代の今でも同じ騒ぎだ。近年は素材技術や加工技術が大きく発展したからケーブル被覆や線材、芯線構造について新たな議論があること自体は是とするべきだろうね。しかし、それでいきなり「オーディオ用」LANケーブルが登場して仰天価格を正当化されるのは、過去の教訓からすれば「またか」の思いが先立ってしまう。
形状や構造、線材が変われば電(磁)気特性が変わるのは**厳密には**正しいから、「ノイズ耐性が悪いケーブル構造」や「インピーダンス特性の悪いケーブル構造」等、個別の性能比較は可能だと思う。測定器でなければ判別できないレベルだと思うが。しかし、技術者なら知っているはずだが製品開発では「一方をよくすれば他方が悪くなる」という問題が不断にあって、たとえば「ノイズに強い構造」だというだけでその製品の最終的な価値を決めることはできない。別の部分で性能が落ちているかもしれないからだ。
「オーディオ用」ケーブル販売店がウソを言っているとは思っていないが技術の細部は消費者には分からない。すると、「聞き分けられるほどの効果が実際にあるのか」や「価格は効果に見合っているのか」が評価の重要なポイントになる。
今のところ小庵は「ブラインドテストで普及品との差を聞き分けられる人はおそらく皆無」で、「聞き分けられないのだからその価格は正当化できない」と考えている。販売数が少なければ製品単価が上がってしまうということを割り引いたとしても、理論上の効果に過ぎないものに大金を投じることはできない。「オーディオ用」と名づけた製品に格別な優位性はないということだ。
部屋も片付きますし。
しかし、LANからケーブルを完全になくしてしまうことはできないと思うね。
遅延があると音が悪くなる? | |||
PCを含むすべてのデジタルデバイスは、そこで何らかの処理を行うとき必ず遅延が発生します。ルータやハブなどもそうで、精密測定器でなければ判別できない非常にわずかな時間ですが、そこをデータが通過するたびに遅延が起きます。これを問題視して「遅延を極小にして音をよくしたオーディオ用ハブ」等が販売されているようです。
それに、遅延と音とが関係があるという認識がそもそも疑問だ。
遅延ならデジタル製品のチャンネルデバイダーやパワーアンプでも発生するし、近年のAVアンプは例外なく発生している。しかし、そのために「音が悪くなった」というのは聞かないね。話題にもならない。遅延のために楽曲再生が間延びするとか、1章節と2章節で再生テンポが変わるなどというのなら問題だが、そんなことではないようだ。すると何が問題なのか?
遅延のために楽曲データが変化すると思っているのならそれは誤解だ。そんなケースが確認されたことはないと思う。デジタル処理の様相とアナログ処理のそれが同様の結果になるという思い込みがそこにある。デジタルの場合、ランダムに遅延が発生しても、また遅延量が変化しても、極端な場合を除きそれはオーディオ再生に影響しない。「極端な場合」とは端的にはそれが不良品である場合だ。遅延が本当に極端になると楽曲再生が途切れてしまうが、それは「音が悪くなる」ということとは別の話だ。
プロトコルの話は? | |||
ネットワークオーディオで利用するプロトコルをオーディオに適したものにしようという動きがあるようです。目的は高速通信です。一部に製品もあります。
みんなは何の気なしにキャッチボールを楽しんでいるが、それが成立するためには以下の条件が必要だ。
- ボールやフリスビーを投げる人とそれを受け取る人や犬が必要だ。
- いきなり投げるとキャッチボールにならないので、相手に呼び掛けて準備ができたことを確認しなければならない。
- 投げたボールを相手が受け取ったか確認してから次の動作を始めなければならない。
- 投げる間隔が短か過ぎれば相手が受け取れなくなるし、間隔が長過ぎるとsoopooは向こうへ行ってしまう。
- キャッチボールを止めるときは相手に合図しなければならない。
そういうわけで、(1)遊びたい相手に呼び掛けて同意してもらう、(2)「さあ投げるぞ」と合図する、(3)投げる、(4)相手のキャッチを確認、(5)それを繰り返す、(6)「もう止めよう」と合図する、というのがキャッチボールの手順になるが、これはそっくりそのままコンピュータネットワークでも必要だし、それを電気的にどう実現しようかと相談して決めたのがプロトコルなのだ。具体的にはデータ通信で必要になる呼びかけと応答のコマンド群を意味する。コマンドと言ってもただの電気信号なので、それが何を意味するか、どう反応するかが双方のデバイスに理解されていなければならない。あとは楽曲データ(ボール)をやり取りするだけだ。
よく考えるとプロトコルって特別じゃなくて、毎日の生活のどこにでも手順や作法がありますよね。
しかし、電子メールシステムなど一般的なネットワーク通信はTCPで行われる。外交文書を受け取ったときに内容が正しいのか分からないのでは困ってしまうからね。インターネットのその他の多くのサービスやLAN内でのNASとネットワークプレーヤーとの間で行われる通信もTCPだ。
さて、ここにネットワークオーディオを利用する場合に工夫の余地が生まれる。soopoo、どうすればいい?
でも現状では製品の多くがTCPを使ってしまうんですね?
ストリーミングサービスではすでにUDPが使われているようだ。ストリーミングでは一部のデータに欠損があっても音がちょっと途切れる程度の影響だから大きな問題ではないということだろう。それにしても、UDPの特徴をよく理解せずに安易にそれを使えばネットワークはたちまち渋滞するだろうね。効果より弊害の方が大きくなる可能性がある。
ユーザ数の少ないLANであれば効果は大きいかもしれない。実現するためにはUDPをデフォルトのプロトコルにしたネットワークデバイスが必要だ。NASやネットワークプレーヤーがそれに対応している必要がある。ハブはTCPとUDPの区別をしないし、LANケーブルも普及品をそのまま使える。PCからNASやファイルサーバにアクセスする場合はOSがTCPを使ってしまうので、特別なソフトウェア(ネットワーク用ドライバ)をインストールし、それを利用できる音楽プレーヤーからNAS等にアクセスする必要がある。いずれにしても簡単なことではない。
UDPを利用するオーディオ環境が今後大きく普及するかについては疑問だ。オーディオのためにネットワークの汎用的な価値を犠牲にすることを世界が受け入れるとは思えないからね。それよりネットワークの広帯域化の方が進むだろうと思う。
必要なソフトウェア | ネットワークオーディオ - ハードウェアとソフトウェア | |
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ネットワークオーディオを利用するために必要なソフトウェアは以下の通りです。
- ネットワークプレーヤーを利用する場合で、それをスマートフォンやタブレットPCから操作したい場合は、プレーヤーに付属する専用アプリをそれらにインストールする必要があります。ネットワークプレーヤーの中にはLAN上のPCに専用アプリをインストールしてそれを操作できるものもあります。
- PCを利用する場合、ネットワークアクセスに対応したfoobar2000などの音楽プレーヤーをPCにインストールする必要があります。
- NASの管理のためには専用アプリをスマートフォンやタブレットPCにインストールしなければならない場合があります。またはPCからウェブブラウザやファイル操作ソフトウェアを使えば同様の作業が可能でしょう。
- ストリーミングサービスを利用するには、PCからならウェブブラウザやfoobar2000などの音楽プレーヤーが、ネットワークプレーヤーからなら付属の専用アプリが必要です。
近年はネットワークオーディオの利便性を高めるためのシステムパッケージが登場しています。あなたが大規模な楽曲ライブラリを効率よく管理しようとしたときに役に立つかもしれません。
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楽曲管理に特化した有料(年間ライセンス料119ドル)のデータベースシステムです。楽曲はLAN内のものだけでなく、広くインターネット上のリソースも対象にでき、ストリーミングサービスまで管理できるようです。PCや専用機器にシステムをインストールして運用しますが、十分な知識がなければセットアップは難しいでしょう。インストール済みの専用機器も販売されています。かなり高価です。
楽曲管理システムなので、それを使って「よい音でネットワークオーディオを」という目的のためのものではない。念のために書いておけば、それを使って「よりピュアな音で」とか「もっと前に出てくる音で」とか「女性ボーカルを一段となまめかしく」とかを期待しても、それは無理な相談だ。利用目的が異なるのだ。この手のものはほかにもあるが、要するに楽曲を手際よく管理するためのソフトウェアなのだ。楽曲データがLANのどこにあるか、インターネットのどこにあるか、それらはどんなデジタルデータなのかという情報を手元で扱いやすくするものであって、あなたがRoonを頼りにそれらの楽曲の音を聞くためにはDACやDDCが別に必要になる。Roonと抱き合わせでDAC等を売る者がいるかもしれないが、魔法のDACでないことはもちろんだ。
データベースシステムなので、数万曲以上の楽曲を管理する場合や世界の楽曲リソースも一括して管理したい場合には威力を発揮するかもしれないね。仕事で使える。
しかし、Roonシステムが数年後にどうなっているか予測がつかない。継続的に料金を支払う必要があること、技術の細部が不明なこと、標準機能を利用するだけでもかなりの投資が必要なこと、関連する他のサービスの運命も予測不能なことなど、率直なところ不安材料が多い。
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