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チャレンジ5chマルチ | |||
1. マルチチャンネルの感動 2. アンチ・マルチ論を考える 3. 機器と構成例、問題点 4. 5.1ch音場のセットアップ 5. 7.1ch音場の場合は? | |||
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アンチ・マルチ論を考える |
AV派 vs ピュアオーディオ派 論点は何ですか? その他の重要な問題について |
古くからのオーディオファンの中にはAVアンプによるマルチャンネルシステムを好まず、それどころか強く否定する人々がいます。理由は様々ですが、このページではそれらの主要なものについて考えます。
じつは、ほんの数年前まで小庵のGもそうでした。
「アナログ2チャンネル以外に真のオーディオはない」と言っていたのです。
TACET版SACDでブランデンブルグ協奏曲を聴くまではね。
今にして思えば時代の新しい動きに反発していただけかもしれない。
AV派 vs ピュアオーディオ派 | チャレンジ5chマルチ - アンチ・マルチ論を考える | |
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オーディオの世界で一般的にマルチチャンネル音源を楽しめるようになったのはSACDの登場からです(1999年)。その後DVD-audioやBlu-ray-audioと呼ばれるマルチャンネル音源が登場し、同時に映像ソフトウェアの音声もマルチチャンネル化しました。当然、オーディオファンの多くがその動きに興味を持ち、初期の試行錯誤が始まりました。そして、共感(AV派)と反発(ピュアオーディオ派)の歴史が始まったのです。
統計情報を見たことはありませんが、その後のオーディオ界の動きを注視していると、2020年の現在、オーディオファンの一部が日常的にマルチチャンネル音源を楽しむようになった一方、それに強い疑念を持ち続けている人々も少なくないように思います。当初は両派で感情的なやり取りもありましたが、今では表面的にはそれは静かになっています。
オーディオ製品について言えば、マルチャンネル音源が登場した当初は対応製品が多く出ましたが、その後わが国のオーディオブームが下火になったこともあって、AVシステム以外ではマルチャンネルオーディオは忘れ去られたような雰囲気になり、高級志向の製品はステレオ2チャンネルに戻ってしまいました。
オーディオ熱が冷めてしまい、歩み寄る元気がないようだ。関連雑誌も無関心を装っている。
小庵はどちらかと言えば今ではAV派だろうか。ピュアオーディが気になるAV派だね。
論点は何ですか? | チャレンジ5chマルチ - アンチ・マルチ論を考える | |
市販の一般的なマルチチャンネルシステムに対するピュアオーディオ派の批判の主なものをまとめてみました。
基本的に軽薄短小で安っぽく、システムのどの部分も性能不十分 | |||
TVの脇に設置するためか小型スピーカーや小型アンプで構成されるAVシステムが多いようですね。小型スピーカーでは豊かな低音や中低音を期待できないように思います。サブウーファーの音はAVファンにはよくてもオーディオファンから見て満足できるものではないという批判があります。
軽薄短小だから悪いということもない。技術の進歩の結果という側面があるからね。安価であることも魅力だ。
しかし、オーディオ機器として見た場合に不満の残る製品が今でもあることは否定できない。
具体的にはスピーカーやAVアンプの性能が気になる。スピーカーについては、古くからのオーディオファンが営々と積み上げてきたノウハウと教訓を十分に生かしていないように見える。ハイレゾをうたう割には「音が出ればいい」という程度の製品もある。もっとも、そんな貧弱なスピーカーシステムにはサブウーファーの存在価値はかえって高い。部屋中を低音で満たしてくれるからね。一時の上機嫌が手に入る。
AVアンプについては、音声処理だけに開発資源を投入できない理由は理解するとしても、オーディオファンにしてみれば画期的なものをそこに感じることは難しい。製品のノイズレベルが高いし、多チャンネル駆動時の電源の能力も気になる。
しかし、どれも改善は容易だ。あなたのお気に入りのものをそこで使えばよい。たとえばAVアンプのパワー部が不満ならそのプリ出力にあなたのMcIntosh275をつなげばよい。スピーカーはパトリシアンでもバレンシアでも好きなものにすればよい。
音場の管理が難しく、音調の統一も難しい | |||
オーディオシステムにおける音場(おんじょう)とは、オーディオ機器からの音声の再生によって作られる音の空間で、音量や音の定位、音色、音質、ダイナミックレンジ、ノイズ感などがその要素となるものです。すぐれた音場を作り出すことはステレオ2チャンネルでも難しいと言われます。音調は入出力装置やアンプ、スピーカーユニット等の音響的な個性が融合して音場内に感じられる音の傾向で、統一的な調子になるシステムが優れていると言われますが、同様にステレオ2チャンネルでも実現は難しいと言われます。「まして5.1チャンネルや7.1チャンネルなんて」というわけです。
ところが、白状するが、私は5.1音場に初めて放り込まれたときに即座に降参してしまった。2チャンネルでは不可能な新しい音場がそこにあったからだ。老人の鈍く暗い心が瞬時に晴れ渡り躍動した。感動は理屈では買えない。2チャンネル観念論なんて「くそくらえ」になった。下品で失礼。
マルチチャンネルシステムに問題が多いことは事実だが、それをどう受け止めるかはこちらの問題だ。小庵は「時代からのオーディオの贈り物」と受け止めることにしている。「登場してくれてありがとう」ということだ。もちろん、解決すべき問題については常に関心を持っているし、改善の努力も惜しんでいない。それにしてもデジタル技術が登場したことは音場を管理する者にとって朗報だ。セットアップが本当に楽になった。
近年はAVアンプの音場管理機能が大きく改善しているので、すべてをそれに任せてみるという選択肢ができた。複雑な問題を一気に解決してくれる可能性がある。この機能は、(1)AVアンプがテスト用の音をすべてのチャンネルに順に出力し、(2)出てきた音をAVアンプ自身が付属のマイクロフォンで聞き取り、(3)スピーカーまでの距離を測り、(4)音の位相を合わせ、(5)音量偏差等を自動的にセットアップするものだ。マルチアンプ派が測定器やデジタルデバイダーを使って手作業で四苦八苦することを数十秒で完了してくれる実にありがたい機能だ。
DSPで音を操作することはオーディオ趣味では邪道 | |||
古くからのオーディオファンは一般に音の信号を加工することを好みません。そのため、たとえばアンプのトーンコントロール機能をオフにします。マルチアンプユーザはことにそうです。理由はただ一つで「音がピュアじゃなくなるから」です。ところが、AVアンプに搭載されているDSPはその禁断の行為を縦横無尽に行います。
世界の音楽ホールの音を現地に行かなくてもDSPの音場管理機能で聴けるというのはありがたい話かもしれない。
ただ、メーカーはオーディオファンの好みは分かっているから音場管理機能をオフにする動作モードを用意しているはずだ。
なお、DSPは音質を操作しているだけではない。DTSやドルビー等のデータをデコード(復号)したり、各チャンネル間のタイムアラインメント調整や位相調整も行っている。マルチチャンネル音源を楽しむためには必須のものと言える。上手に使えばよいと思う。
LFEチャンネル(サブウーファー)には問題点が | |||
5.1/7.1チャンネルシステムの.1はサブウーファーチャンネルを意味しますが、これはピュアオーディオ派には不人気です。「どこに置いてもよい」なんてとんでもないとか、「ブンブン吠えるだけで不自然な低音だ」とか、中には「音が遅れて出てくる」というのもあります。
しかし、これについては次のページ「機器と構成例、問題点」を見てほしい。
ちなみに小庵はサブウーファーを使わず、4-wayシステムの最低域(50Hz以下)を38cmウーファーに受け持たせている。
センターチャンネルには問題点が | |||
センターチャンネル用スピーカーはオーディオ趣味のレベルから見れば一般に貧弱なものが大部分です。小型のエンクロージャに小型のユニットが入っています。このため、センターチャンネルから楽音を再生する場合、十分な音質を確保することが難しく、フロントチャンネルとのバランスも悪くなります。
ほかにも問題があるが、詳細は次のページ「機器と構成例、問題点」にあるのでそちらを見てほしい。
小庵はセンタースピーカーを設置している。
楽曲ソフトウェアが不十分で将来性に疑問 | |||
マルチャンネル音源にはBlu-rayディスク/DVD/SACDに収録しているものやダウンロードサービスからのものがありますが、2チャンネル音源の豊富さに比べて現状はさびしい状況です。価格も割高です。中には2チャンネル音源を人工的にマルチチャンネル化しているだけのものもあります。また、ディスクメディアは自分用のバックアップを作ることもできません。これらは改善されるのでしょうか。
ディスクメディアの制限が撤廃されそうもないことが分かってわが国ではSACDの当初の熱狂が消えてしまった。
私はソニー社とフィリップス社、著作権団体に責任があると思っている。オーディオ界の暗い影だ。
ただ、欧米ではSACDレーベルはまだ比較的に元気で、名盤と呼ばれるものも少なくない。価格も良心的だ。小庵の最初のSACDも欧州盤だった。クラシックやジャズなどには国内レーベルは興味がないようだから、ディスクメディアで楽曲を探すなら欧米版に注目するのがよい選択だと思う。
インターネットの楽曲ダウンロードサービスからもマルチチャンネル音源は手に入るが、今のところその再生手段が限られるので普及までには時間がかかるだろうね。こちらの音源はコピープロテクトがゆるやかなのでSACDのような運命にはならないと思う。
なお、SACD凋落の原因は何といってもそこからのリッピングが許されないことだと個人的に思っているが、わが国の著作権法は購入ソフトウェアの個人用のバックアップを持つことを許しているので、どのような複製(コピー)も許されないかということになると当局も言葉を濁すようだ。それを頼りにインターネットにはSACD収録楽曲の複製を作成する方法を公開しているサイトがある。小庵でも試したが、SACDの2チャンネル音源だけでなく5.1マルチチャネル音源も手元のPCにDSDフォーマットの楽曲ファイルで保存できた。2チャンネル音源ならfoobar2000などの音楽プレーヤーからDSD対応DACで再生できるし、マルチチャンネル音源の場合は楽曲ファイルをUSBスティックに入れてAVアンプやSACDプレーヤーに挿入すれば高音質再生が可能だった。soopoo、これは違法なのか?
うーん、令状を持った人が来ないのならたぶん問題ないのでは?
来たらぼくが噛みつきます。
私は押入れに隠れているから、あとは頼む。
SACD再生機器へのメーカーのサポートが不十分 | |||
アナログに負けない音質ということでSACDが登場して、プレーヤーは普及品でも5.1チャンネル音源の再生に対応していたころがありましたが、今では2チャンネル対応機がほとんどです。プレーヤーメーカーも対応機器の販売から次々に手を引いてしまいました。マルチチャンネルオーディオの未来は明るくありません。
しかし、SACDが目指していたものまで色あせたわけではない。「ハイレゾ音源」や「マルチチャンネル音源」の普及という観点から見るなら、SACDは一定の成功をオーディオ史に残したと小庵は考えている。何よりDSDフォーマットを残した。それらの普及はまだ十分とは言えないが、それにしてもそれが捨て去られる時が来るとは思えない。
デジタル技術に対する基本的な疑い | |||
マルチチャンネルシステムは主にアナログオーディオ支持派から批判を受けているようです。すべての批判は最後には同じことを言いたいのかもしれません。「デジタルは音が悪い」と、また「デジタル技術の上に成り立つものは信用できない」と。
日常的に触れるものに最高を求めるのは異常心理の一つだと小庵は考えている。最高を求める執着が最終的に日常を破壊してしまうからだ。そこには傲慢と尊大、欺瞞と蔑視が生まれる。洞窟の奥から聞こえるものが音楽と言えるか疑問だ。
コストをかけず普段着で聴ける音楽こそすばらしい。それにはデジタル技術がよく合っている。広く多くの人々に音楽を届ける使命はデジタル技術にある。最高ではないかもしれないが感動の一押しは機械の役目ではない。あなたがどこまで行けるかはあなたの心が決める。
時々そうなりますよね。大丈夫?
今年の人間ドックはアタマを調べてもらおうかな。
その他の重要な問題について | チャレンジ5chマルチ - アンチ・マルチ論を考える | |
オーディオファンも満足できるマルチチャンネルシステムを構築しようとすると、以下の点についても注意が必要です。
最良のリスニングポイントは狭い | |||
マルチチャンネルシステムの最善のセットアップに成功すれば、驚きの音響体験があなたを待っているでしょう。新しい音場がそこに現れるはずです。しかし、注意するべきことがあります。感動の音響空間はかなり限定された範囲になるからです。
5.1/7.1マルチチャンネルシステムの音場セットアップは以下のように行います。
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- スピーカーシステムの各チャンネルからの再生音がリスニングポイントに同時に届くようにする(タイムアラインメントの設定)。
- リスニングポイントに届く各チャンネルからの音の位相を正しく調整する。
- リスニングポイントに届く各チャンネルからの音量のバランスを正しく調整する。
セットアップ内容自体は2チャンネルの場合と同じですね。2チャンネルの場合、前方2組のスピーカーシステムから等距離にある場所ならどこでもリスニングポイントになります。たとえばリスナーが前後に移動することには何も問題がありません。
でも、マルチチャンネルの場合はリスナーの左右や後方にもスピーカシステムがあり、それらのすべてでタイムアラインメントや位相の設定が行われるので、リスナーは最適なリスニングポイントから自由に動くことができないことになります。動けばせっかくのセットアップが(厳密には)意味のないものになります。左右に首を振っただけでも音が変わるはずです。
これはマルチチャンネルシステムの弱点と言うことができます。改善することはできません。あなたが友人を呼んでパーティーを開くときは主賓にその狭いリスニングポイントに座ってもらってください。
AIによる顔認識技術は実用化されているし、オーディオシステムとそれを組み合わせることは難しくない。
難しいのはそんな酔狂なシステムに大金を使う気がある人がいるかどうかだ。
AIは音声アシスタントができますし、車内のどのシート位置でも簡単にリスニングポジションにできるようです。
それに、カーオーディオ用のスピーカーユニットがホームオーディオ用の最高級システムに使われていたりします。
高品位システムを目指せば高コストに | |||
AVアンプや対応スピーカーシステムのメーカーはオーディオファンにも満足してもらえるように近年は高性能製品の開発・販売に力を入れています。パワーアンプ機能を持たないAVアンプ(AVプリアンプ)や、それと組み合わせて使うAVパワーアンプの中にはピュアオーディオ派も注目の製品があります。しかし、高額ですね。国内メーカーによるAVプリアンプは100万円近くになります。
住環境や部屋の検討も必要に | |||
マルチチャンネルオーディオに本格的に取り組もうとすれば、最後にはあなたの住環境が問題になるでしょう。部屋の広さや形状の問題、家具や建材等の問題等、どれもが気になります。オーディオの道はなかなか大変ですね。小庵のGは「ほどほどにするべきだ」と言っていますが、その割にはひんぱんに部屋の模様替えをしています。
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